印籠(Inro):十一代飛来一閑 Hiki Ikkan 11th 1791-1872
根付・緒締(Netsuke/Ojime):永楽和全 Eiraku Wazen 1823-1896
画(painting):松村景文 Matsumura Keibun 1779-1843
上田耕甫・十二代飛来一閑 極二重箱
with a signed box by Ueda Koho(1860-1944) & Hiki Ikkan 12th(1816-1892)
5.7×6.8×2.3(H)cm ※印籠本体(Inro body)
万年茸とも呼ばれる霊芝は不老長寿の伝説を持つことから吉兆の縁起物として、古来より美術の世界に数多く登場してきました。薬を身に着けるための道具としての印籠に、これほど格好の図案は他にありません。
漆で霊芝の姿を描いたのは四条派の画家・松村景文。派祖である松村呉春の弟にあたります。呉春が文人趣味的な山水風景に長じたのに対し、景文は日本らしい写生的な花鳥を得意としました。裏面左下隅に景文の花押があります。
一閑張り技法による印籠本体は千家十職である十一代飛来一閑の作。景文との活動期間を照らし合わせると、十一代一閑の襲名年である1818年から、景文の没年である1843年の間に造られたものと考えられます。シンプルな一段造りの印籠で、実用に向いたものです。印籠底部に「一閑」の朱漆銘があります。
取り合わされている根付と緒締は、こちらも千家十職に数えられる永楽和全の作。飛青磁の鴨形の根付と金襴手の緒締は、どちらも和全の作品として優れたものです。
後に十二代一閑の極め箱が造られ、さらにその箱が傷んだのか、耕甫による二重箱に作り直されています。和全の根付などはこの時に取り合わされたものかもしれません。
元の紐はかなり傷んでいましたので、新調しました。
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