『某家所蔵品入札 大阪美術倶楽部 昭和10年11月26日』売立目録所載
松枝不入は江戸後期の漆工。一声庵、無塵庵などと号した。
日本一の茶人大名である松江藩主・松平不昧公の知遇を得て重用されたが、一度も松江に入らなかったので「不入」の号を与えられたとされる。晩年は京都の神楽岡に住し、「神楽岡不入」と名乗った。
乾漆や張貫などの妙技に秀でた人物。
男児の玩具である鳩車を漆にて嵌入した香合で、蓋の甲面はヘギ目、その他はざらざらとした黒塗にしている。共箱も曲げ物を黒く一閑張りにし、「鳩車」の題字の字を横向きにコケさせているのが男児が鳩車を引きずっている様子が想像できて面白い。
曲げ箱底に朱漆にて『天保三季制』とあり、天保3年、不入61歳頃の作品であることが分かる。
また外箱には前の持ち主が鳩車という玩具について説明書きをしている。
『昭和10年11月26日 大阪美術倶楽部 某家所蔵品入札』売立目録所載。他にも面白い不入作品が出品されており、不入と近しい人物かコレクターだったようである。
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