水内杏平は京都の漆工家。本名は平一郎。京都市立美術工芸学校漆工科を卒業し、迎田秋悦に師事。また洋画のデッサンを鹿子木孟郎に学ぶ。昭和11(1936)年の改組第一回帝展以来入選を重ねつつ、京都を中心とした各団体展などで活躍した。また後年は母校の京都市立美術工芸学校漆工科および日吉ヶ丘高校漆芸科で後進を指導した。
彩漆を用いた彫漆と蒔絵を組み合わせた作品は、同じく彫漆技法が特徴である讃岐の漆工作品に比べて華やかで且つ柔らかく光を放つ独特の優しい雰囲気を持つ。
少々のスレ・掻きキズがあるものの全体的に状態は良く、共布・共箱が添う。大きめの画面に彫り出された牡丹の蕊は螺鈿であらわされ、その柔らかな光調が全体の色どりに豊かさを加えている佳品である。 |