岡田表寛の塗りに鈴木玉船が蒔絵を加えた作品。 岡田表寛は「表派」木村表斎門下の塗師の家系で、主に懐石道具や家具などの塗りを手掛けた。また鈴木玉船は詳細不詳なるも、後に大阪の日本蒔絵会社で活躍した中川芝泉や、白漆を開発した初代稲井玉甫などを育てた蒔絵師である。 蝋色塗りで木地の歪みも少なく、外側に黒蒔絵で桜文様を総体に散らし、内側には変わりゆく紅葉の色彩をあらわしている。十客の内、四客にのみ椀の身の高台内に「玉船(花押)」の金漆銘が入れられている。 共箱にある「内田正啓堂」なる漆器(道具)店は不明。