佐野長寛は新町三条の漆器商・長濱治兵衛の子として生まれ、若くから諸国の漆器産地や富豪・大名所蔵の美術品を見て回った。そうした経験を生かして、文政5(1822)年に帰京し開業。現在でも作家が手本とする斬新で優れたデザインの数々を生み出し、高麗の名工・張寛になぞらえ「長寛」と号した。
本品は古来よりの伝来裂の文様である花兎文を配したデザインで、こうした古裂や陶磁器の文様を漆器に取り入れたデザインは非常に長寛らしいと言える。五枚組で、経年のスレはあるものの別段キズや直しなども無く、更に長寛らしいキチンとした書体の共箱も添っており希少である。